最大勢力は日和見菌

原発をどうするとか経済をどうするとか福祉をどうするとか戦争ってどうよとか、まあ、いろいろな考え事があります。
自分が考えている方向に近い具合に風が向くこともありますが、「なんでそうなるの!」という事態に向かうことも少なくありません。
で、その状況をすこしでも変えたいと思う時、どうしたらよいでしょう。
ああ、話しが硬くなりそう。わかりやすくしましょう。
たとえば、あるグループがお饅頭屋さんへ行き、「こしあん」か「つぶあん」かが問題になりました。
そのお饅頭屋さんは、1グループ1種類のオーダーしか受けないトノサマ店舗なので、ひとつに意見をまとめなければいけません。
「こしあん」派、「つぶあん」派はそれぞれどのような戦略をとればよいのでしょうか。
わたしは、「人の命は腸が9割」(by藤田紘一郞氏)という書籍の中にそのヒントを見いだしました。

腸内細菌は、ざっくり言えば「善玉菌」「日和見菌」「悪玉菌」に分けられます。
「善玉菌」も「悪玉菌」も数でいえば少数派です。
「日和見菌」は腸内最大勢力であり、つねに有利なほうに味方をしようと形勢をうかがう性質があるのだそうです。
「善玉」にも「悪玉」にもなる腸内最大勢力が「日和見菌」。
そして、腸内の世界の環境を決めるポイントは「日和見菌」にあるということです。
ここからはわたしの想像ですが、おそらく徹底的に「悪玉菌」だけを選別して除去することは不可能だと思います。
「善玉菌」が「悪玉菌」を呼んで説教、なんてことないだろうし、
腸内世界で、【こんどこそ決着を!「善玉菌」VS「悪玉菌」全面戦争】、なんて直接対決やらないでしょ。
強烈は抗生物質などは効果を発揮するでしょうけれど、「善玉」「悪玉」「日和見」すべての腸内細菌を死滅に追いやる核爆弾のようなもの。
さらに、「悪玉菌」と呼ばれる中にも、状況によってはとての有用な役割が待っているケースもあるでしょう。
ということで、すべては共生してるのがやっぱり自然。
実際、現実レベルでも、たとえば自分と決定的に考え方の異なる人と議論し、仮に論破したとしても、その人の考え方は変わりません。
これは何度か経験していることで、つまり、わたしは、自分と異なる考えを殲滅することは永遠にムリだと思っています。
直接対決には意味がないのです。
また、自分と同じ考えの人とだけ同調的会話を重ねても、そうそう他人には変化を及ぼせません。
まして、同じ志向の者同士が、そうでない人のことを揶揄して溜飲を下げているのは、まったくいただけません。
ここで、また身体の中に話しを戻します。
今度は脳内です。
人間の脳内では、どのようにして意志決定がなされているかについて、
前野隆司氏は「脳はなぜ『心』を作ったのか」(筑摩書房)の中で次のように述べています。

考えているのは「無意識」の小びとたち

この小びとたちとは、ムーミンに出てくるニョロニョロが脳内にうじゃうじゃいる、という意味ではありません。
「脳のニューラルネットワーク(神経回路網)が担う各々の処理をこなすモジュール」=「小びと」のことです。
顕在意識は、この小びとたち(無意識)の計算結果を受け、さも自分がひらめいたように認識するので、つまり実質的意志決定者はこの「小びとたち」と言えます。
では、この「小びとたち」はどうやって意志決定しているのでしょう?
多数決なのです。
ただ、その多数決は日本の選挙と同じで「一票の格差」があって、やはり声が大きいものは強いらしい。
「考えごと」をする小びとが声を大にしてわいわいがやがや⇒多数派。

※ここで【ガラスの音】

「聴覚」の小びとが緊急事態的な発火⇒「考えごと」の小びと黙る。

「ガラス大好き」の小びと多数派に。
つまりは「騒げば多数派」になるのが脳内の意志決定システム、ということらしいのですが、
全員が大声でどなりあって収拾しない、ということにもならないようです。
●まわりの小びとの声が大きいと黙る=抑制
●しゃべってるとすぐに疲れる=疲労
という小びとの性質が、結局どこかを多数決にしてしまうみたい。
もともとそれぞれの「小びと」に高次元の意志や哲学があるわけではなく、言ってみればみんな日和見主義者。
なんだか腸も脳も社会もあんまり変わりがないようです。

さてさて、話しお饅頭屋にもどします。
ここでも、頑強な「こしあん派」「つぶあん派」は少数です。
大多数は、「どっちでもいいのに」「なんとなく●×かな」という人たち。
で、この大多数が集団の意志を決定します。
なので、密室での両者ガチンコ議論、なんてのはまったく意味がありません。
相手のリーダーをターゲットにするのは見当違いです。
対戦をするのであれば、大多数を前にしてのプレゼン合戦。
日和見な人たちへどういうアピールができるかがポイントになります。
アピールやプレゼンをするにあたり、押しつけや強引さは敬遠されるでしょう。不愉快で過激な表現もいやがられるかもしれません。「教えてやる」的な言われ方を嫌う人も少なくありません。
そして、現体制との親和性やお金、物量などがものを言うということも見落としてはいけません。
もし、そのいずれも手持ちにない場合は、知恵やアイデアが必要になります。
それについても、また腸内細菌に訊ねてみようと思います。
ちなみに、「人の命は腸が9割」では、「地球上にいる細菌の総重量は、人間の総重量の1000倍以上といわれ、誰が地球の主人かわからん」など、なかなか目からウロコな見地もあり、他にもいろいろ参考になりました。

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