「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」を読みました。
年末・年始に熱海へ行ったのですが、そこへの行き返りの車中で読んでしまいました。
それくらい読みやすい本でした。
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わたしは、いわゆるグレイトフル・デッド・フリークではありません。
もちろん、そういう年代ですから、バンド名は知ってますし、ジェリー・ガルシアのギターは、わりと好物の部類です。
ですが、レコードをコレクションしたり、それをすり切れるほど聴いたりというファンではありませんでした。
だから、この書籍がただの「グレイトフル・デッドのアルバム紹介」とか「アーティストとしての作品年鑑」的な本だったら、まったく読まなかったでしょう。
やっぱり興味を持ったのは「ビートルズよりストーンズより儲けてしまったバンドの秘密」であり、インターネット以前の時代にすでに行われていた「フリーでシェアでラヴ&ピースな21世紀のビジネス」についてでした。
「コンテンツを無料で提供しよう」
「フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう」
「ブランドの管理をゆるくしよう」
「中間業者を排除しよう」
これ、最近のネットマーケティングの本でもあやしい情報商材の文章ではなく、ぜんぶ、「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」の目次の文です。
で、具体的に記述されているのは、「当時のインフラを用いたソーシャルメディアによるマーケティング」であったり、「ファンにライブ音源の録音やその交換を許す(フリーウェア)ことによりリーチを広げ、バックエンドのキャッシュポイントで稼ぐ」というやりかたであったりします。
それは「技術」としては、今、すでに多くの企業や起業家が取り入れていることかもしれませんが、それを1965年に生まれた、しかも「たかが(と思われがちな)」「ヒッピーのような連中がつくった(それはそうかも)」一介のロックバンドが数十年も前にやっていた、ということ、そして結果的に成功をおさめているという事実、それがすごいわけです。
ただ…、その手法や工夫だけがすごいわけでもありませんし、そのままマネすればばいいとも思いません。
本当に彼らがすごいのは、既成の成功パターンを拒否し、自らの手で「新しい市場」を創出したことです。
そのためには、とてもたくさんの試行錯誤があり、失敗も数多くあったでしょう。
彼らのライブ演奏のスタイルも「決まったやり方やセットリストを何回もこなす」というやり方ではなく、常に新しい試みを行って本番でも失敗を繰り返したそうですが、マーケティングでもそうだったのではないかと思います。
「市場の創出」とか「顧客の創造」とかは、あのマーケティングの神様・ドラッガーが、「最も重要な理念」というほど大切な考え方ですが、プロのマーケティングの人たちも、それを容易く体現できてはいません。
既成のレコードレーベルや音楽業界の成功パターンを拒否し、ある意味それと真逆のことを行い、しかも成功する。
グレイトフル・デッドがなぜグレートになったのかと言えば、彼らが既成の勝ちパターンを退け、何者もマネしなかったからでしょう。
う〜ん、そうありたい、と思いますねえ。
あっ、それと「マーケッティング」というワード自体にネガな感情を抱く人もいるかもですが、それについては糸井重里氏が前書きでこう書いています。
——–(要旨引用)———
マーケティングがいやな言葉に感じる理由のひとつに、ある種のマーケティングが「大衆操作的」なものだと考えられているからです。
でも、そうではない、大衆が自らマーケットを創っていく創造的マーケティングがあるんです。
で、これは、「大衆操作的」なマーケティングが好きな人たちに一泡ふかせることすらできそうです。
——–(要旨引用終わり)———
この「一泡ふかせる」っていいですね。
ふかせたいヤツ、いっぱいいるかもです。
さて、もともと、この本の存在を知ったのはFacebook広告。
んで、クリックして出てきたFacebookページの「いいね」をクリックして、サンプル版のpdfをダウンロード。
そして、まんまとアマゾンでリアルブックを発注しているわたし、というわけです。
このプロセスそのものが、現代のマーケティングのトレンドなわけです。
「こういう本」だからこそ、新聞の一面下部に書籍広告、といった従来型の広告ではなく、Facebookの特性を活かした効率のよい販促を行っている…ということなのでしょう。
そのせいか、あっという間に5刷も重ね、累計部数が…3万部突破、ということです。
3万部…をどう評価するか、ですが、今の書籍事情の中ではけっして少ない部数ではありません。
しかしながら、福辻鋭記氏の「寝るだけ! 骨盤枕ダイエット (ヒットムックダイエットカロリーシリーズ)」の100万部突破と聞くと、「もうすこしグレイトフル、頑張ってよ」と思います。まあ、こういう本だからマス広告なしにじわじわと部数増やすとは思いますが。
どんな本が100万部(ミリオンセラー!)超えか!
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やっぱり、なんかオマケをつけなきゃダメなのかな?
あっ、そうすると今の既存手法のマネになっちゃう。
ところで、この本の装丁やデザインにも一言書いておきます。
最近の書籍は、DTPソフトを使って、ただテキストを流し込んだようなデザインも少なくないのですが、この「グレイ…」のデザインはなかなか凝っています。
当時のジャケットデザインやライブの写真などがところどころに挿入されていますが、それが浮かないような味付けになっています。
ピンクフロイドがサイケデリックサウンドなんて呼ばれていた時代をちょっと思い出しました。
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