エジプトはきっと対岸ではない。

エジプトのムバラクがとうとう辞任しました。
これはすごいことだと思います。
起きていることは、ある意味「革命」だと感じますが、
それがほぼ「無血」で行われたことがすごいと思います。
フランス革命などの歴史をひも解かなくとも、
革命にはつねに流血がつきまとってきました。
「変革には血が必要だ」
ということが是とされた時代もあったわけです。
それが、エジプトの場合、ここまでほぼ無血です。
(もちろん犠牲になった方はおられます…ご冥福をお祈りします)
おおきな理由のひとつに、100万人以上の人が参加したデモ活動が、集団暴徒化や無意味な混乱をせず、とても抑制的に行われたことでしょう。
それを成し遂げたエジプトの民衆に敬意を表します。
さらに、その民衆に対してエジプト軍が暴力をふるわなかったことです。
これもすごい。
軍のトップの知性がすばらしいのか、軍人も心情的には民衆と同期していたのか、理由はわかりません。
しかし、ともあれすごいことです。
あとは、この後です。
日本でも大政奉還は無血で行われましたが、結局、その後、戊辰戦争や西南戦争などで血が流されています。
エジプトではそういうことのないように願います。
ところで、日本の伝統的メディアは、今回のエジプトでの動きについて、実に微妙な態度をとってきました。
ムスリム同胞団を非合法のテロ予備軍のような報じ方をしたり、デモ隊の多くが暴徒で文化財の破壊者であるかのような印象を与えようとしたり…。
その理由はいくつかあると思います。
誰もが思いつくのは、ムバラク=親米という点で、メディアもムバラク批判をしづらいということがあるでしょう。
他にもいろいろ理由は考えられますが、そのなかのひとつとして、今回の「革命」自体が「インターネット」という「伝統的メディアの破壊者」からもたらされたものなので、そんなの認めたくない、ということもあるかもしれません。
田原総一郎が週刊朝日の中で(ムバラク辞任前ですが)
「ネットの普及がなければチュニジアやエジプトのような事態は起きなかった。
 これからネットがどう世界を変えていくのか。
 言論・表現の自由のない国々の為政者たちは
 不安を募らせていることだろう」
と書いています。
ここで田原氏は「言論・表現の自由のない国々の為政者たちは不安を募らせていることだろう」と、まるで対岸のようなもの言いで書いていますが、この感覚は「鈍い」と思います。
対岸ではありませんよね。
日本でも起きるのではないでしょうか。
最後に日本政府の対応も、つまるところ「旧体制より」で、実にカッコ悪かった。
秋元貴之のツイッターによれば、「(ムバラク辞任直前の)日本政府の公式見解が「ムバラク辞任反対」というのは情けない」とあります。
ちょっと調べたら、2月4日の記者会見(伝統メディアの記者クラブでの、だと思います)では、
「国民の気持ちは分からないではないが、現実的な政権を作っていくということはどういったことかを少し冷静に考えるべきではないか」
として、慎重な変革を求める発言をしています。
ムバラク辞任直後に「民主的な新政権の誕生を期待」というコメントを出していますが、どうも……
「わかってるのかな?」

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