「ゼイリブ」という映画をご存じでしょうか。
1988年、アメリカで作られたSFホラー映画です。
監督は「遊星からの物体X」「透明人間」なんかでも知られるジョン・カーペンター。
その世界では物質主義が蔓延し、あるエリートたちがサブリミナル手法や先進科学技術を使って専制的支配を行っています。
広がった貧富の格差の底で、就職のない人々。
蔓延していく「命より金」の価値観。
ブルドーザーでつぶされる夜のテント村。
水平に向けられる銃身。
整列進行する武装警官たちの盾に体当たりをして弾かれる男。
警官たちに撲殺されそうになる盲目の牧師。
前半描かれる光景は、わたしたちの仲間や兄弟が経験したり見聞きしてきた体験そのもの。ニュースのフラッシュバックのようでもあります。
主人公はやがてある特殊なサングラスを見つけます。
それは普通のサングラスではありません。
「服従せよ」
「結婚し、出産せよ」
「考えるな」
「消費せよ」
「テレビを見よ」
「買え」
そういった街にあふれたサブリミナルメッセージが見えるようになるサングラスでした。
特に、紙幣に書いてある「これは神だ」というサブリミナルメッセージは、いろいろ象徴的です。
その「真実が見えるレンズ(サングラス)」を通して見た世界は、実は人間に化けたエイリアンに支配されている世界でした。
エイリアンの仲間になると昇進し、昇級し、経済的自由が手に入り、社会的な力も得られます。
なので、多くの「人間」もエイリアンの仲間になっていて、「本当の人間」はそういった人たちを説得したり戦うことも余儀なくされます。
ずっと映画の題名を思い出せずにいたのですが、今日、ひさしぶりに見ることができました。
あらためて見ましたが、現代の日本にも照らし合わせて見えるシーンがたくさんありました。ジョン・カーペンターが指摘するさまざまな問題はまったく今の同じです。
映画の最後がどうなるか、こちらをどうぞ。日本語字幕版です。
THEY LIVE 日本語字幕 from takanojyou on Vimeo.
ところで「ゼイリブ」よりもさらに昔、1960年代、子供の頃に見た「空飛ぶゆうれい船」も忘れることができません。
子供用の娯楽アニメでありながら、そこで描かれていたテーマは、テレビによる情報操作に対する批判であったり、国民的人気の清涼飲料水の有毒性やそのコマーシャリズムへの皮肉であったりしました。日本のアニメはホントにすごいです。
原作の石森章太郎は当時知っていましたが、原画製作に、若き日の宮崎駿も加わっていることは大人になってから知りました。
ただ、このアニメも、今だったら「各方面への配慮」により公開されなかったかもしれません。
そう思えてしまうほど、現代の表現者はまるで「自主規制」という名の蜘蛛の巣の中にくるまれているようです。
ということは、再放送なんてこともないんでしょうか。
ただ、「空飛ぶゆうれい船」はDVDもありますし、動画サイトでも見ることができます。
【追記】
この記事を公開後、新しい知見を得たので書き足します。
「ゼイリブ」の主人公のロディ・パイパーは、ボクシングのカナダ王者で、しかもその後、プロレスラーとして日本にも来ていたそうです。
有名なスタン・ハンセンやブラックジャック・マリガンのパートナーもつとめ、なんとアントニオ猪木とのシングルマッチもやっているといいますから、わたしもリアルタイムで見ているはずです。
それで映画の中間部のアクションシーンの謎が解けました。
あそこがどうにも冗長で、しかもブレーンバスターだとか、あまりリアリティのないキメ技が出てきて、「なんだこりゃ」と思っていたのですが、あそこはファンにとっては「見所」だったのですね。
歌手が主人公の映画の劇中で、主人公が歌を歌うシーンと同じですから、そうそう短くはできないわけです。
さて、「ゼイリブ」で描かれたエイリアンによる巧妙な支配は、今もリアリティを持っています。
それも、今では、サブリミナルな手法だけでなく、さらに実効的なメッセージ統制が、眼前で繰り広げられているように思えます。
わたしは、「ゼイリブ」に出てくる「真実が見えるサングラス」を持ってはいません。
さまざまな情報を、とても注意深く見る必要があります。